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07.23
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君が、いつか死んだとき、
 
僕が、いつか死んだとき、
 
言おうと思っている言葉がある。
 
 
ごめんなさい の ありがとう
 
さようなら の ありがとう
 
だいすきだよ の ありがとう
 
ありがとう の ありがとう
 
 
ありがとう を言おうと思っている。
 
そのとき僕と君は一緒じゃないかもしれない。
 
そのとき君は僕を嫌いになっているかもしれない。
 
そのとき僕は幸せじゃないかもしれない。
 
それでも僕は、 ありがとう を言おう。
 
君に、せかいに、 ありがとう 。
 
 
 
 
 
って思ってしまうぐらい、今の僕は幸せです。
 
だから、

君に、せかいに、 ありがとう 。
 

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パキン、と
 
爪が、折れた。
 
 
私はその爪のカケラを絨毯からつまみ上げた。
私はそのワタシだったものをつまみ上げた。
 
そして、
口のなかにいれた。
 
カリ、カリ、
 
指先の心細さを紛らわすように
 
カリカリ、と噛む。
 
(大丈夫、だいじょうぶ、)
 
カリリ、
 
(爪は、再生するんだから、)
 
カリ、カリ、
 
(だいじょうぶ)
 
カリカリカリリ、
 
 
 
欠陥したのは爪、
欠落したのは心。
 
カリカリカリリ。
 

 
僕は守っています。
とても大きなものを僕は守っています。
 
それは、とてもとてもおおきくて、
僕はちょっとだけかなしくなります。
だって、それの前での僕は余りにも小さいのです。
 
それは、とてもとてもおおきくて、
僕はちょっとだけうれしくなります。
だって、それを守っているのはほかでもない僕なのですから。
 
 
それはときどき、僕に話しかけます。
 「ボクハ、キミカラ、ウマレタンダヨ」
僕はそれをきいて、やっぱりうれしくなります。
 
 
それは、おおきなしゃぼん。
それは、おおきなそら。
それは、おおきなうみ。
それは、おおきなせかい。
 
それは、おおきなあい。
   

 
ちょっとだけ水が入ったコップ。
そのなかに放りこむ、白いカタマリ。
 
その名は酸化カルシウム(CaO)。
 
海苔のふくろに入ってた乾燥剤。
あめ玉みたいなかたちして、白い紙に包まれてた乾燥剤。
 
水に浸かったそれは、じゅわじゅわと泡を出す。
私はただ頬杖をついて見ていた。
泡が死にかけると、私は水を足した。
そうすると、泡が生き返った。
そして、不意に、
 
 
ぱかり、
 
 
表面の白い殻から、銀色のまあるい球が生まれた。
ふるふるとゆれた水銀状のその物体は、
 
直後、
 
音をたてて炎上した。
 
 
 
 
 
全身の毛を逆立てた私は、それをただ見ていた。
そして考えた。
 
これをあめ玉みたいに舐めたらどうなるのだろう。
 
きっと、熱い。
熱くて熱くて熱くて、
口のなかが銀色になって、
熱くて熱くて熱くて、
ドラゴンのように火を噴いて死んでしまうのだ。
 
それは、なんて  (、ロマンチック)
 
 
 
 
だから、
きょう私は、海苔を買ってきた。
 
 
きょう私は、白いカタマリから生まれ変わる。
 
きょう私は、灼熱に身を焦がす。
 
きょう私は、銀色の竜に、
 
 
 
 
うまれかわるのだ。
 
 

 
土曜日の昼過ぎ。
ふたりだけの教室。
それはなんだか背徳的な気分さえした。
 
しん、と静まり返った夏の空気のなか、私たちは向かいあっていた。
永遠のような一瞬が過ぎた後、彼が口を開いた。
 

 
「好きだ」



その言葉は脳髄を刺激して、
鳥肌がたって、
胸が震えて、

そして――――

 
 

Pipipipi,Pipipipi...

ガンッ

反射的に目覚まし時計を叩く。


そして、そこで気付いた。

夢、だった。

まるで現実のような、夢、だった。

いまだ、肌が粟立っている。
いまだ、胸が高鳴っている。
現実、だった?


いや、違う。
あれは、夢だった。


ベッドから降り、裸足のまま浴室に向かう。
冬のフローリングは冷たかった。


(好きだ。すきだ好きだ好きだすきだすきだ好きだすきだすきだ)

頭のなか、何度もリピートされる言葉を掻き消すように蛇口をひねった。

シャァァァアァアア、、、

冷水のシャワー。
髪やパジャマが濡れて、身体にはりついてゆく。
全身の感覚が麻痺してゆく。
体と一緒に心の温度も下がってゆく。

冷たい。寒い。
痛い。

そう、これが現実だ。

さっきのは夢だ。幻だ。
全て、過去の幻影なのだ。

「よし、」

蛇口を締めて、風呂場から出る。
  

 
 
  
 
 
蜃気楼はただの湯気
昨日はただの幻
あなたはただの影
私はただ現実という名の今日を歩く
 
今までのことは全て夢
忘却の渦に飲み込まれ、語られることなく消える、
 
ただの、夢
 
  
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