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こぞのはるのまとめ的な?感じのやつです。
上手い具合に深読みすればこぞのはるの結末が見えてくるよね、みたいな。
って、これ絶対に、こぞのはるが全部終わってから乗っけるべき代物ですよねわかりますしってますでも載せます勝手ですいませーん!テヘッ☆
雨が降っている。私は傘をさしている。
視界は霞か霧か真白い何かで晴れていない。
川が流れている。その身を大きくしながらも、普段と変わらぬ静かなせせらぎの音をたて、滔々と、川が流れている。
これは一体どういうことか。
何故、雨が降っているのだ。
何故、川はせせらいでいるのだ。
掌が濡れた。
ふと見れば、傘の柄に雨水が滴ってきていた。掌ばかりでなく袖も足も濡れていた。
私は躊躇した後、傘を地に捨てた。
雨が降っていたからだ。
そうか、注連縄は雨と一緒に落ちたのか。
私はそう気付いた途端、走り出し、川に駆け入った。
降ってはいけない雨が降っていたからだ。
その深さは、太ももの上の方まで浸かるほどであった。ざぶざぶと水を掻き分けて川の真ん中に向かう。
すると、突然、ズボリ、と足元がなくなった。
いけない。
そう思った瞬間沈んでゆく。
想像以上に深かった水の底に落ちながら、私は必死に両手を振り回した。
空気が恋しかったからだ。
そうすると、指がなにかに引っかかった。私は正に藁にも縋る思いでそれに掴まった。体を引き上げ、水面に顔を出す。
そこは丁度、川の真中であった。
掴んだものは、水でよられた縄であった。
縄は水と空気の間にあった。右の方には先があって、そこに桃色と萌葱色の霞が立っていた。左の方の終わりは見えず、どこまでも灰色の靄が纏わりついていた。
私は川の行く手の方をどこか妬ましく思いながらも、心からそれに微笑みかけた。
そして振り返り、縄をたどって靄の中に身を投じた。
雨は私を打ちすえ続けている。
どれ程わたって来たのか。
それすらも分からなくなった頃、靄の中に、舟と、人影が見えた。
私は恐る恐るそれに近付いた。段々と、細部が明確になってくる。
あれは、水夫だ。
そう思った数瞬間後、それは彼であることに気付いた。彼が水夫の衣装を着て、小舟に乗っていたのだ。彼は、虚ろな目で靄の粒子一つ一つをただ眺めていた。
「やあ」
私が声をかけると彼は此方を振り向き、そして泣きそうな顔になった。
彼の口が動いて、「すまない」という言葉の形をつくった。
声は雨にかき消された。
これほど降っているのに、何故か彼とその船だけは渇いていた。
私は水の縄から小舟の縁に移って、それに掴まった。覗けば、小舟には舵もオールも縄さえも無かった。
彼は辛そうな、痛そうな、顔をしながら、靄の中に手を伸ばし、一握りのそれを私にそろそろと差し出した。
ああ、そうか。
私はそれを迷い無く、勢い良く、吸い込んだ。
彼は驚いた顔をした。
磯の香りがした。
雨が止んだ。
私は彼を小舟から引きずり降ろした。
ざぶん、と彼が川に落っこちて、舟はひっくり返った。
私は呆然とする彼の腕を引っ張って、川を下り始めた。今度は縄になど掴まらず、すいすいと泳いだ。水を吸って重たくなっていた洋服など何処かへ行ってしまった。彼は、私に付いて泳いで確りと来ている様だ。
彼の表情は見えない。
見えないが、分かった。
きっと彼も同じなのだろう。
だから私達はこの川を泳ぎ、下る。
前には、霞が広がっていた。
あとがき
おわり方びみょーだな……。
そして、身を知る雨って萌えだよね、っていう。まあそれだけの話。