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07.19
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そろそろ本気で出来の悪いのしか残ってないんだぜ……。

第3弾は「電信柱」です。
村上龍とか読んだ直後に書いたんだと思う…。たぶん、去年の梅雨の時期。
そして、オチがすごく中二病くさいです。

「え?これモロBLじゃね?」って思われる方がいらっしゃるかも知れませんが、これは、断じてBLじゃないです。




雨。
雨が降っている。やさしく、しっとりと。まるであらゆる全てのものをゆっくり包みこんで、その輪郭線を溶かしてゆくみたいだった。
その中をアスファルトにたまった水をバシャバシャ云わせながら、気取ったポルシェが喧しく通り過ぎた。
僕は一瞬その汚さに顔の皺を寄せたけれど、すぐにその皺も消えた。何故なら、雨が降っているから。深い深い群青と、グレーと、街頭のオレンジ。それらに包みこまれる。雨は街から喧騒を取り除いた。此処にいるのは、僕と、彼だけだった。

彼に出会ったのは一年前だった。下らない酒を飲んで、不味い話をして、阿呆のように騒ぎまくって、終電を逃して。それで、歩こう、と思った。馬鹿共と別れた後、急速に全ての温度が低下して、それが何だか心地よかった。だから、歩いて帰ろうと思った。そして、彼と出会った。彼はその時、突っ立っていた。寂しそうにひとりでぽつねんと、切れかかった街頭の光をちかちかと浴びて、立っていた。
僕はその姿に、見惚れた。あまりにも、あまりにも、彼は美しかった。泥だらけで縮んでくたびれた服を着ていたけど、それでも彼は美しかった。その美しさは僕を慄かせた。戦慄だった。思わず僕は彼に話しかけた。話してみれば、彼は寡黙な人だった。そして、この世界の誰よりも、美しく、芳しく、透き通った、心の人だった。僕はそれから何もかもがどうでも良くなった。彼以外の人間が本当に汚らわしく見えた。僕が彼と話しているときに僕らに気付いて声をかけてくる人はいた。でも僕の愛に気付いても、彼の美しさに気付く人は誰もいなかった。僕はその人たちが可哀想に思えた。愚かに思えた。それから、少し、安心した。そういう人が居る度、僕は彼が僕だけのものだということを確認出来た。僕は彼を、本当に愛していた。

ザァァアアアッ
そして今日、僕らの愛は完成する。
雨足が突然強くなった。遠くの方から、此方に向かってヘッドライトが近づいてくる。
「僕も君とおんなじになるんだ。そうしたら、ずっとずっとずっと一緒にいられる。素敵だろう?本当に素敵だ」
そう言って、僕は雨が流れる彼の灰色の肌をざらりと撫でて、車道に飛び出した。

「さようなら、世界」
 

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