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10.31   comment (0)
こんっちゃ!madoraです!
久々に小説ですんー。
紅花の、滝口三兄弟を一人称で書いたときの書き分け練習のやつなんであれなんですが!
書き分け楽しいですねー!けど、出来上がったのを読み返すと、全然書き分けられてねえじゃん……ってなりますねー!まあ、それも良し!

順番は生まれた順(昇→護→学)です。
一番書きやすいのは護。
けど、昇は、私が昇テンションな時があってそんときに何か書くと全部昇になります^p^p^
そしてすっげえ書き辛いのが学です。

あと学もしかしたら初登場かもしれない!わー!
滝口学です!三男です!学生です!理系です!物理オタクです!よろしくおねがいします!




「何処に行くんだ」
外出の準備を始めた愚弟に訊いた。
弟は身を強張らせ、黒目を揺らし乍ら暫くの沈黙を許した後、答えた。
「……蕪木のところへ………」
相も変わらず、尻すぼみで判然とし無いものの言い方だ。心底腹が立って仕方が無い。そう思い乍ら、己は弟が嫌って止まない紫煙をこれ見よがしにくゆらせた。
巻煙草は後の方になって来ると葉の中に脂が溜って苦い。己は半分を過ぎた辺りの其れを灰皿に押し付けて火を捻り消し、立ち上がった。
「己も行こう」
「え」
弟の咽喉の最奥で其の一音が密かに鳴ったのが耳に入って、己の心を益々固くする。

  *  

「珍しいですね」
私達兄弟二人を迎えた彼は、兄に言った。
「それに、懐かしい」
そう付け加えて。
それに兄が応える。
「推さない自分は何時も此の顔ぶれで居たな」
兄は紙巻煙草に火を点けた。不味そうな顔をして煙を吸う。用の済んだ燐寸棒は、彼が、「ええ、そうですね」と言う相槌と共に灰皿で受け取った。
「さて、茶を淹れて来ますね」
「紅茶だ」
彼が立ち上がればすかさず兄が言った。
「はい、畏まりました。然し――」
「砂糖やミルクなどは構わない」
「はい、有り難う御座います」
彼は一礼すると、部屋を退出した。
高い茶葉を注文して置き乍ら「構わない」などと言う兄の了見も、其の兄を必要以上に丁寧に扱う彼の思惑も、私には全く理解し難いものだった。
「梅が咲いていたな」
道中で見かけた春の花の名を兄が出す。
「ええ、そうですね」
枝から零れる程に咲いて居た紅色を頭の中に甦らせる。
「じゃあ、お前」
兄は笑みを浮かべながら言った。
「『梅』で何か興じてみろ」
紫煙が私の方に漂ってくる。
梅の香も茶葉の匂いも其れに掻き消された。

  *  

自分が午前の授業を終えて家に帰ると、ある筈の兄二人の姿が無かった。二人であの茶葉屋に行ったのだ、と母が訊いてもいないのに教えて呉れた。
「お前も行ってきたらどうだい。最近、会ってないだろう」
と、母が言った横で、下女のつ弥が火鉢に炭を入れていた手を止めた。自分の返事次第では、その火鉢が必要で無くなるからだろう。
「いえ、今日は遠慮しておきます」
博士から貸して頂いた本が包みの中に入っている。今日中に読んでしまいたかった。
自分の答えに応じて、つ弥が停止させていた動作を再開した。つ弥は下女にしては賢い女だ。
「どうしてだい。行ってきたら良いじゃないか」
然し、母は未だ納得していない様子だった。
「今日中に読んでしまいたい本があるのです」
そう答えても、母は「明日じゃ駄目なのかい。明日は大学も休みだろう」と言った。自分は少々疎ましい気持ちになりながら「如何しても今日でないとならないんです」と答えた。
つ弥は既に温かい火鉢を部屋に置いて、退出していた。


気が向いたら、続き書きます。
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