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ホモが書きたかった。
時代物が書きたかった。
秋を書きたかった。
この3つの欲求を満たす為だけに書いたから本当にやまなし・おちなし・いみなし。
おちなしに関しては、最強に特化してます。ご注意ください。
あと、終わり間際でモチベーションが急に下がってます。
「もうめんどくせえよ」っていうのが文章全体からにじみ出ている。
彼は、不治の病の治療法を見つけたような顔をしながら、
「もしこの世界が誰かの見ている夢だとしたらどうする?」
と、僕に尋ねてきた。
「どうするもこうするもないだろ」
僕は、彼と彼に少しでも期待した自分を情けなく思って溜め息をついた。
「なんだ、君はつまらない奴だな」
彼に比べたらこの世界の全てが つまらないもの だ。
「で?」
彼は更に何かを求めるような顔を僕に向けた。
「で、とは?」
「もしこの世界が誰かの見ている夢だとしたら、という仮定について君の御高説を拝聴したいね」
彼は尊敬語というものを厭味や悪ふざけ以外で使ったことがあるのだろうか。
そう、
いつだって彼は天上界の者のように僕たちを見下ろす。
身体を支える確固としたものも空翔る翼も無いはずなのに、彼は誰ものぼれないような高みから人々を見下ろす。
「もし、」
僕は口をひらく。
「もし?」
ああ、
僕が言った言葉など半刻も過ぎれば忘れてしまうのだろうに。
何故、そんなにも興味深そうに耳を傾けてくるのか。
勘違いを、
(おこしてしまいそうだ、)
「もしこの世界がだれかの夢だったとしても、僕には関係のない話だ」
「ふむ、」
話を続けろという合図だ。手っ取り早く結論だけ言って済ませてしまおうと思ったのだが。
(、やめてくれ)
あまり長い間、近くに居たくは無い、
「たとえ『この世界が誰かの夢』であっても、僕たちにとってはこの世界が現実。夢の世界のなかで、夢の世界の人間がおもう夢物語なことなんて起きない。起きるのは夢の世界の外側の人間がおもう夢物語なことだけ。夢の世界の人間がおもう夢物語が起きるのは、夢の世界の人間の夢のなかだけ。
夢の世界の人間は夢の世界が現実。
それだけなんだ。
だから、」
「だから、どうするもこうするもない、と」
彼は突き抜けるような空を見上げていた。
もう、秋である。
「そう言いたいのかい」
「分かってるじゃあないか」
「ああ……つまらない奴の考えることはやはりつまらなかったよ」
息を吐く音が聞こえる。
「………そう。だったらとっとと何処か別のところへ行っておくれよ」
内心、ほっとする。
だが、気管には何かが詰まっている。
「君はつまらない上につれない奴なんだな」
彼は不敵に笑った。
目が、合った。
(嗚呼、)
「この僕が喋ってやっているってのに」
やはり、逃れられないのだ。
鷹のように空から人を見下ろして、仔鼠を見つけ捕獲し、喰らう。
彼は、鷹なのだ。
「あのね、君はもうs―――!」
その瞬間、
言いかけた言葉を、うばわれた。
一瞬、
なにが起きているのかわからなかった。
目の前には、白磁の肌。長い睫毛。
そして、
唇には確かな、感触。
カチ、カチ、カチ、
いやに、
時計の秒針の音が聞こえる。
カチ、カチ、
6秒目で、僕らの唇は離れた。
秋の風が、部屋のなかを駆け抜ける。
彼の細くやわらかい髪の毛が、光をふくむ。
一瞬、これは夢なのではないかと疑った。
「残念ながらこれは、現実だよ」
「う、そ、だ、、、」
「この現実でも君にとっての夢物語のようなことは起こったね」
これで君の論は破綻してしまったよ、と彼はくすくすと笑った。
まるで、木々が囁いているような笑い声だった。
「じゃあ、先ほど君が言った通り、僕は退散させてもらうことにするよ」
「またくるよ」
彼の鳶色の瞳が、うるみ、ゆれる。
「僕は君に捕らわれているのだからね」
庭のどこかで、
死に忘れた壱匹の蝉が、ジリリ、と啼いた。