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07.20
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07.09   comment (0)
大変長らくお待たせしました二回もデータがぶっ飛んだ、ことほぐ第二部です……大変やっつけ仕事です………スランプです………madoraです………。




「それでは、失礼します」
女は一礼した後、帰路に着いた。その背を彼が見詰める。私が見た事の無い顔だった。
「それで、此れから何処へ行くんだい」
横顔に問い掛けた私の言葉に、彼は答えもせず歩き出した。
立ち止まったままの私と、歩いて行く彼。後姿はじわじわと、遠のいて行く。
私は暫くその姿を見つめた後、早足でその後を追った。

葉桜の並木道を行く。
そう言えば花見は結局やらず仕舞いであった。ぽつぽつと、地面に落ちたその名残は茶色く。彼は、ゆっくりと歩く。その横に並んで行くのが何と無く嫌で、私は斜め後ろについて歩いていた。過ぎ去る地面に目を落した侭。

「お前――」
沈黙をたもっていた彼が漸く口を開いた。何を言うのだろう。私は長い間、下に向けて居た顔を上げた。
「なんだい」
「あの女をどう思う」
「え」
思わず、問い返した。
「何でも良い。思ったことを、言ってみろ」
彼がその言葉をどの様な顔をして言ったのか、私には分からなかった。私は再び、視線を下に落す。何かが、私の中で渦巻いていた。彼は私の返答を待って居るのだろう、黙ったままだ。
「…………そう、だね……。良い人、だと思うよ」
そう言うのが精一杯だった。強い、風が吹く。草木が揺れ、土埃が舞った。
「そうか」
それでも、彼は、前を向いた侭歩き続けるばかりであった。
彼がどんなに私の事を気に病もうと、私がどんなに彼の事を突き放そうとも、畢竟は、此の様な関係なのかもしれない。彼は此方を向かない。そうだ、何時だってそうだったのだ。いくら私を気遣おうとも結局彼は己の自分を突っ切って行く。

「君は、勝手な男だ」
気付けば、口にして居た。
彼が立ち止まる。
はっ、として口を押さえた。然し、一度飛び出した言葉は戻っては来ない。
「護」
呼ばれる、名。
彼は矢張り前を向いた侭、言った。

「俺を、捨てろ」
 

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