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07.18
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「それ、どうするの」
少年が指をさす先。男の手。そこには、一輪のバラ。愛らしいリボンや美しい包装紙もなにもないバラ。その茎にあるはずのトゲは全て折られたバラ。花びらがまだ綻び初めたばかりで、ワイングラスのようなかたちのバラ。薄桃のバラ。
無骨な男の手に、その美しい花はあまりにも不釣り合い。
可哀想な、バラ。
「決まっているじゃあないか」
男は笑った。角張った男の指が花弁を撫ぜる。なめらかな薄桃色。しっとり、として、さらり、としているその表面を。
「綺麗に、綺麗に、咲かせて、」
少年は恐れおののき、身体をふるわせた。男はそれを見て、また笑った。強者が弱者を笑う。水気を含んだ、爽やかな桃色。摘まれ、トゲを奪われ、命を取られた、桃色。
可哀想な、バラ。
「そうして、水をとばして永遠の美しさを与えるのさ」
男が知を振りかざし、それに満ちた愛を与えれば、花の凛とした潤いは失われ、温かな涼しさは葬られる。液体の命を吸い取られ。
可哀想な、バラ。
「どうだ、素晴らしいだろう」
「うん」
少年は生ける屍となることを望みはしないが選ばざるを得ない。少年は死を恐れるから。男は死を与えるから。
死して尚、土に還ることも許されず、生かされる、子。
可哀想な、キミ。
 
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